パンダコラム|「同一労働同一賃金制度」について考える。

2018年6月に『働き方改革関連法案』が成立した。残業規制、脱時間給制度そして同一労働同一賃金を3本の柱としたのがこの法案。人口減少が進む中、一人ひとりの生産性を高めることがねらいである。働き方に大きな変化をもたらす法律であるが、今回は2020年4月から制度適用される「同一労働同一賃金制度」の意味、目的やメリット・デメリットについて考えてみた。

 

「同一労働同一賃金」とは?

同一労働同一賃金制度とは、「同じ企業・団体において、同じ仕事内容であれば、その雇用形態にかかわらず、同じ賃金を支払う」という考え方です。
様々な事情により、非正規雇用を選択する労働者が増加している中で、正規雇用者と非正規雇用者の間の不合理な待遇差を解消し、多様な働き方を選択できる社会にすることを目的としています。

●パートタイム・有期雇用労働法:大企業2020年4月1日、中小企業2021年4月1日より施行
●労働者派遣法:2020年4月1日より施行

同一労働同一賃金制度が生まれた背景

同一労働同一賃金という考え方が生まれた背景には、非正規雇用者が増えている一方で、このまま正規と非正規で差をつけたままでいいものかという考え方が広がっていることがあります。
厚生労働省の調査によると、非正規雇用者の人数は、1984年には約604万人(役員を除く雇用者全体の15.3%)でしたが、2015年には約1,980万人(同37.5%)へ、3倍以上に増大しました。
その一方、パートタイム労働者の賃金は、1985年ではフルタイム労働者の50.1%、2015年では57.1%と、30年間でほぼ横ばいの水準で推移しています。(同調査による)
このような正規雇用者と非正規雇用者の賃金格差が問題視されるようになった結果、政府は同一労働同一賃金制度を含む法律を2018年の国会にて成立させたのです。

「同一労働同一賃金」の概要

短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止について、正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(パートタイム労働者・有期雇用 労働者・派遣労働者)との間で、待遇差が存在する場合に、不合理なものでないのか、原則となる考え方と具体例を厚生労働省はガイドラインで示している。

○ 基本給、昇給、ボーナス(賞与)、各種手当といった賃金にとどまらず、教育訓練や福利厚生等についても記載。

○ 厚生労働省のガイドラインに記載がない退職手当、住宅手当、家族手当等の待遇や、具体例に該当しない場合についても、 不合理な待遇差の解消等が求められる。

各社の労使により、個別具体の事情に応じて待遇の体系について 議論していくことが望まれる。企業が行なっておく対策としては次のことが考えられる。

1.雇用形態ごとに職務内容を把握しておく

2.適用したな内容に人事制度(規則・雇用契約書等)を見直す

改正法の施行時期に合わせて適用される予定です。ただし、中小企業におけるパートタイム・有期雇用労働法の適用は令和3年4月1日。このため、現時点で、今回のガイドラインを守っていないことを理由に、行政指導等の対象になることはありません。

なお、現行法においても、 労働契約法20条、パートタイム労働法8条・9条 において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差が禁止されています。

同一労働同一賃金を導入するメリットとデメリット

同一労働同一賃金は給与や待遇面において、企業と労働者側ではそれぞれの立場によってメリット、デメリットが異なってきます。

1.企業側のメリット、デメリット
【メリット】
・非正規雇用者の労働生産性向上が期待できる
非正規雇用者にとっては、制度導入により正当に評価され満足のいく給与支給が実現されることで働くモチベーションが上がり、生産性向上も期待できる
・優秀な人材を確保・獲得しやすくなる
制度がしっかり導入されていることが社内外に広まることによって企業への評価も高まり、人材の流出が防げる、採用面でもプラスの効果を生みやすくなる。

【デメリット】
・人件費が高くなる
現在の正規雇用者の待遇を維持しながら、非正規雇用者を同等の待遇にすることで、人件費の高騰が予測される。
・合理的な説明が必要になる
制度導入後は、将来的な役割の違いを理由に非正規雇用者と正規雇用者の待遇差を出すことはできない。待遇格差について合理的な理由を説明するためにも人事制度、就業規則の見直しや人事評価の基準を作成する必要がでてくる。

2.労働者側のメリット・デメリット
【メリット】
・賃金上昇への期待や働きがいが生まれる
制度が実現することで、非正規雇用者は正規雇用者との待遇差が減り、正当な評価も得られることが働きがいにもつながる。
・非正規雇用者の能力が向上する
非正規雇用者も正規雇用者と同一の教育訓練を受けることが可能になることで働く意欲が高まり、モチベーションが上がり、離職するケースも減少する。

【デメリット】
・賃金上昇により正規雇用者の賃金が減る可能性がある
企業が負担する人件費増により、正社員の賃金が減るケースも考えられる。また企業が正社員の雇用を縮小する恐れもあり、リストラの可能性が上がる。
・職務上の責任や負担が増える可能性がある
正規雇用者と同じ待遇になることで以前に比べ求められることが増え、職務上の責任や担当業務の範囲等の負担が増える可能性がある。

 

同一労働同一賃金の目的は、「正規社員・非正規社員の格差」の是正です。これを実現するためには人事制度や就業規則の見直しが必要です。
制度導入には多大な時間と労力がともないますが、長期的な視点でみれば、制度設計がしっかりしている企業は労働者にとって働きやすい環境になり、それが人材の流出を防ぐことにもつながることでしょう。

パンダコラム

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